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嬉泉の想
鼎談『課題を媒介とした交流』~心のケアとしての受容的交流療法~-01-
阿部秀雄(日本抱っこ法協会名誉会長・袖ケ浦非常勤講師) 石井啓(社会福祉法人嬉泉 理事長) 沼倉実(社会福祉法人嬉泉 療育援助統括理事)
嬉泉新聞第89号にて巻頭言「課題を媒介とした交流」をご寄稿いただきました、日本抱っこ法協会名誉会長 阿部秀雄先生と、社会福祉法人嬉泉理事長 石井啓、同療育援助統括理事 沼倉実との鼎談の模様をお届けいたします。 阿部先生は、長年に亘り、嬉泉福祉交流センター袖ケ浦にて「心のケア」研修の講師をしてくださっており、そのテキストは法人として製本し、職員全員に配布をしています。 この鼎談は、上記巻頭言に加え、2024年3月に行われた社会福祉法人嬉泉の全体職員研修にて、阿部先生にご講義いただきました「本当の自分、本当の気持ち」、さらには、同研修での職員による実践発表の内容も加味し、嬉泉が大切にする「受容的交流」の考えを、より一層深める機会となりました。「鼎談のテーマ」について
石井
今回、阿部先生には嬉泉新聞の巻頭言『課題を媒介とした交流』を書いていただきまして、それに応える形というか、それを基に沼倉理事が文章を書いて、同じ第89号に載るんですけれども、今日は嬉泉新聞のその二つの記事を請けての鼎談ということで、お話をさせていただきたいと思います。
まず、阿部先生が巻頭言に書いてくださった『課題を媒介とした交流』というテーマなんですけれども、あえて阿部先生が今回巻頭言にそのテーマを選んでくださったということについて、まずそのお考えというか、どういったことでお選びになったかっていうことを教えていただきたいと思います。
阿部
石井哲夫先生のご本を読ませていただいて、やっぱり「課題を媒介とした交流」というのが受容的交流療法の肝なのだなということを、つくづく私自身納得しまして。石井先生は1971年にお書きになった『自閉症児がふえている』からそのことについては、揺るぎなく強調されてきたことじゃないかなと思います。
私は毎週、嬉泉福祉交流センター袖ケ浦に、職員研修のためにお伺いしているわけですけど、そこは意識的に取り組んでいかないと、どうしてもついつい埋没していってしまいがちな考え方じゃないかなと思って。
特に生活支援施設というのは、日常最低限のケアをしていくだけで精いっぱいというところがあって。だから、「日常のケアに加えて心のケアが大事ですよ」ということは言いにくい状況はあると思うんですけど、言いにくい状況があるからこそあえて言っていかなきゃならないことじゃないかなと。
日常の仕事が大変なのは分かるけれども、そこであえて「心のケア」にまで踏み込んで仕事をしていくと仕事そのものが面白くなるし、また楽にもなりますよということを伝えたいと思っているわけで。その「心のケア」の中で、やっぱり核心となるのが課題を仲立ちとした交流なんだよってことを、常々、毎週お伺いしている中では伝えてきたつもりです。