嬉泉

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嬉泉の想

【保育】2歳児グループ:家族構成の変化に伴う家庭支援の変化

【P君の気持ちと保育者の気づき】

休み明けの朝、2歳児グループの保育室に母親と登園したP君は、母親と離れることに不安な様子で、0歳児の弟を抱っこしながら朝の支度をする母親のスカートを握りしめていました。母親に週末の様子を聞くと、家族4人で水族館に出かけたとのことでした。また、「せっかく出かけてもイヤイヤが激しく、機嫌が悪いことが多くて、親は疲れて大変でした」と母親は困った表情で保育者に訴えました。

「イルカさんはいたかな?」とP君に話しかけると、「サメさんいたよ!」と教えてくれたため、サメの話をしながらP君に両手を伸ばすと、抱っこに応じてくれたので、一緒に母親を見送りました。引き続きサメの話をしていると、「しなかったよ!」と、P君が訴えるように言いだし、何をしなかったのか聞いても「しなかったの」と、まだ説明することが難しい様子でした。

「何かしなかったのね。なんだろうね、お母さんに聞いてみようね」と話しかけました。

周囲にいた子ども達も水族館の話に興味がある様子だったので、「みんなで水族館に行こうか!」と、ぬいぐるみや玩具を魚に見立て、水族館ごっこを始めてみたところ、P君も「サメこっちだよ」と友達と遊び始めました。子ども達よりも少し高い場所にある棚に、魚が泳いでいるようにパズルを並べていた子どもが「みんな~おいで」と他の子ども達に呼びかけたところ、子ども達が一斉に集まりました。

「見えない!」と子ども達が押し合いになったため、棚の近くに行くと、P君は「ねえ、抱っこ!」と、抱っこを求めてきました。P君を抱き上げると「あのね、抱っこしなかったよ」と先ほどの続きのように抱きついてきました。「P君は水族館でママに抱っこして欲しかったの?」と聞くと、「ママ抱っこしなかった」と繰り返し言い始めました。「では、ママがお迎えに来てくれたら、水族館の分も抱っこしてもらいましょう」「今は私が抱っこしてあげるよ」と抱きしめると、笑顔になり納得した様子でした。

【保育所の取り組み】

この日の職員打ち合わせでは、P君のことについて話し合いをしました。弟が生まれてから特に本児の自己主張は強くなり、両親共に困っている様子でした。それに対して送迎時や連絡帳を通して、両親の戸惑いを受け止めながら、本児の気持ちを伝えるなどしていましたが、「赤ちゃん返りとイヤイヤ期だから仕方がない。」と考えている様子で、上手く伝えることが難しく、担任も悩んでいました。

そこで、降園時間に母親と担任が、ゆっくり話ができるように園全体で調整をしました。そしてP君の迎えの時に、今日の出来事を母親に伝えると、「水族館では、弟がベビーカーに乗せると泣いてしまうので、私がずっと弟を抱っこしていました。だからP君は(抱っこして)と言えなかったのですね」と言って、P君を抱きしめました。この日の帰りは、弟を担任が、P君は母親に抱っこしてもらい玄関に向かいました。

【まとめ】

本児は、母親のお腹が大きくなり始めた頃から登園時に「ママがいい」と泣き、降園時には「帰りたくない」と泣くことが増え、何を言っても「イヤ!」と主張する姿が多くなっていました。子どもが発する「イヤ」の中にも、様々な感情があり、気持ちを言葉で伝えることが発達上難しいだけでなく、自分の置かれている状況や、母親の気持ちなどに遠慮してから言いだせない場合もあります。特にP君は、周囲の人の感情を敏感に感じ取りやすい気質のように感じていたため、両親の本児への理解が課題でした。

子どもの発達の喜びや育児の大変さに共感しながら、保護者との信頼関係を育むなかで、保育の様子や子どもの内面に添えるような保育者の関わりを、保護者に具体的に伝えていくことを積み重ねています。そのことは、時間を要する場合もあるが、保護者の子どもへの理解を深めていくことに繋がっています。